サイクロンダストコレクター

 木工における集塵システムは健康面・環境面において非常に重要だと思います。しかしこれがやっかいな代物でして、未だにしっくり行かない部分が多くあります。一番やっかいなのは袋にたまったおが屑を掃除するときで、せっかく集めた埃を再度まき散らす事に歯がゆい気持ちでいました。また、おが屑がたまれば袋式の場合集塵効率が悪くなり、頻繁に掃除しなければならない事になります。
そんなこんなで、必要に迫られ、サイクロンコレクターにて改善を図った次第です。
 毎度のことで、あり合わせの部材で製作しましたので、見た目は悪いです。あしからず。


 自分なりに解釈しているサイクロンの原理は、円筒状の筒の中に円筒の中心軸からオフセットした位置に吸い込み口を設け、その働きにより旋回気流(サイクロン)を発生させ、空気より比重の重い固形物を外側へ追いやる事で、クリーンなエアーを中心から吸い取るというものです。いわゆる遠心分離器みたいなものですね。
 写真の上部がサイクロンの部分に当たります。下部は分離されたおが屑をためるドラムです。
 サイクロン部は適当なものが無かったので2.3mmのベニア板を曲げて作り、コーン部は工房にあった大きなブリキ製の漏斗を流用。これはお米を袋に詰める時に使用したものとか。ちょっと角度が広いのですが気にせずに進めます。
 
 ドラム部の素材は”プラダン”との商品名でHCに売られています。いわゆるプラスチック製の段ボールです。これも曲げて、つなぎ目は板を当てて固定。最初は弱い集塵機を使っていたのでプラダン1枚でも大丈夫だったのですが、大型の集塵機に変えてからは負圧でバックリング(潰れる)してしまったので現在は2重にして使用。それぞれのふたはベニヤ板を丸く加工し、シールとしてスポンジで出来た隙間テープを使用。
各スペックは次の通り。
・集塵機:日立RW320(2.2kW、32立米/min)。
・吸い込み口径:φ150
・サイクロンに入るパイプ径:φ100
・サイクロン本体:φ450×750
・コーン部径:φ120
 漏斗の口はφ210mm有るのですが、これでは少し大きすぎる為、発砲スチロールでふさいでいます。この程度で有ればドラムに溜まったおが屑が舞い上がる事は有りません。但し比重の軽い針葉樹のおが屑では詰まってしまうことが有ります。このような場合は発泡スチロールを取り外して通り道を確保します。
 サイクロン本体は天井から下がったロープにつながれており、これを引っ張る事でサイクロン本体を引き上げます。
 そして、ドラムを引き出し、横倒しにして、写真の通りゴミ袋に移し替える訳です。袋にたまったゴミを掃除するより格段に作業性が向上しました。集塵機を設置してある場所は3畳程の小部屋になっており、ここに換気扇を付け、掃除の時には換気しながら行いますので、工房側には全く埃がたちません。また、運転時は小部屋の戸を閉めきりますので運転音も非常に静かです。
 もし、これから工房をと考えられている方は、集塵機用のスペースを設けることをお勧めします。
 工房内には天井に塩ビパイプを利用して配管を張り巡らせています(本当は静電気対策で金属製がよいのですが・・・・)。パイプの中は負圧ですので接合部は差し込むだけで接着はしていません。今後レイアウトを変える時にも、対応が楽です。

 各装置につながれたパイプにはバタフライ式のゲートを付け、通路を切り替えることが出来ます。

 塩ビパイプは加工性も良く非常に便利なのですが、呼び径100のもので内径φ107であり、一般的に使われるダクトホース(内径φ100)と合いません。そこで簡単な接合方法として右下の写真の様な方法をとっています。ストレート継ぎ手の真ん中にリング状のフランジが付いていますが、これを糸鋸で一部を残して切り取ります。継ぎ手の内径とダクトホースの外径はほぼ同じですので、それを差込み、ホースの溝に切り残した突起部をねじ込みます。多少エアーは漏れますが、抜けることも無く、簡単に着脱可能。

使用してみた感想


 既存のものを利用して作りましたので、変な格好をしていますが、サイクロンの分離能力はかなりのものです。試しに集塵機側の布袋を取り外して細かいおが屑を吸わせてみましたが、排気口からは埃すら出てきません。使用して半年程になりますが、袋の掃除はゼロです。コーンのテーパー角が異様なので心配しましたがあまり関係ないみたいです。それよりもインティーク側のノズルを絞って気流を早くした方が効果アリです。(ちなみにこのノズルは少し下向きに取り付け、渦が下に流れる様にしています。効果のほどは?)
 素材は何でも良いかと思いますが、金属ですと木っ端を吸い込んだ時に”ガラガラ”と少々うるさいかも。
 サイクロンの一部にアクリルののぞき窓を付け、渦の様子が見える様になっており、これを見ているといつまでも飽きないです(・・・・おっと仕事仕事・・・・・)

 集塵機の能力に合わせて各部のサイズは変える必要が有るかと思いますが、ご覧の通り簡単に作れて効果大です。みなさんも挑戦されてはいかがでしょうか。